肝腎

 今日は、仕事が終わってすぐに、職場近くの耳鼻科へ向かった。二月半ばからつづく鼻水・鼻づまりに嫌気がさしたからだ。処方薬をもらって薬局を出ると時間は6時半をすぎており、遠くの方の空は翳りつつあった。ただそれでも、やはり夜の訪れは日ごと短くなっていて、長袖シャツ一枚で帰る軽やかさで自転車をこいだ。

 このごろ、健康についてたびたび考える。仕事の方が忙しくなり始めているせいかもしれない。例えば、休日出勤などで自分が体調を崩すと周りに迷惑をかけてしまうから健康に気を遣おうと思う。それは静かなプレッシャーになり、夜の寝床にふかく沈む。だれかに言われたわけじゃないのに、なんとなく、風邪をひいてはいけないような気がしてしまう(別に同僚が休んでも恨んだりしないのに)。思い込みがすぎているのだろうか。

 話はやや逸れるけれど、近所にあるデパートの駐輪場について書きたい。以前までは、駐輪場の料金は出口に座っている係員の人に払うようになっていた。それが最近、発券機が導入され、料金の支払いも精算機にお金を入れる仕組みに変更された。つまり、係員の人がいなくなったのだ。僕はときどき、あのおじいちゃんは今頃どうしてるのだろうかと想像する。特に喋った記憶もないのに、彼らにさびしさを覚え、勝手に可哀想な気持ちになっている。

 人よりも機械の方が便利なのだろう。機械は人間関係で揉めることがないし、労働法も関係ない。体調を崩して休む人が出た際に、代わりの人を用意する必要がない。でも、僕はそのあたりの、人間の揺れやすさというか、風邪をひいたり身内が亡くなってお葬式に出なきゃいけなかったりするような、生きててどうしようもない側面に目をつむろうとしている感じがすごく切ない。

 そうは言っても、僕は健やかでいられるように努めるだろう。人造人間のようになれたらと思う。非常勤職員はとにかく健康でいさえすればいいから。でも、流行病にかかってしまったり、お子さんが体調不良で保育園から電話がかかってきたりするものだ。僕もときどき、張り詰めていた線がふっと切れるように、扁桃腺が腫れて発熱に苦しむ(有給休暇が減る)。体調管理というのは、本当に可能なのだろうか。病院だけじゃない、気分の方もそうだ。自分のものなのに、なかなか掴めない。たまには、元気なのに一日休みにして県外まで旅行したいものだ。新幹線の流れる景色、駅弁を口にしながら…。